さぽろぐ

ビジネス  |札幌市中央区

ログインヘルプ


インフォメーション


QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 1人
プロフィール
ヒット商品応援団
「人力経営」という本を書きました。ヒット商品の裏に潜んでいる「人」がテーマです。取材先はダスキン、エゴイスト、野の葡萄、叶匠寿庵、桑野造船の経営リーダー。ユニーク、常識はずれ、そこまでやるのか、とにかく面白い経営です。星雲社刊、735円、新書判。

2006年06月21日

うわさの法則 

ヒット商品応援団日記No74(毎週2回更新)  2006.6.21.

ダン・ブラウンのベストセラー小説の映画化である「ダ・ヴィンチ・コード」がヒットしている。6月6日には800万人を動員し、1000万人を軽く超えるといわれている。様々な暗号解読をビジュアルでうまく表現した点は、古くは「ビックリマンチョコ」とある意味では同じである。また、1990年代初頭の謎本「磯野家の謎」もそうであった。物語消費の過剰さは、一方で「謎解き」消費の過剰さへと向かっている。最近のマスメディアのテレビ報道までもがそうした方向に進んでいる。元来、いち早く正確な事実報道を主眼とするニュースはワイドショー化を超えて、謎解きに終始しはじめている。今回の秋田小1児童殺害事件も、鈴香容疑者のこころの謎解き報道となっていることは誰もが感じていることと思う。ゲストには犯罪心理学者や元警察鑑識、あるいは脳科学の専門家までが出演し、専門意見を述べる。視聴者は、時に警察官になり、被害者の母親になったり、場合によっては裁判官にもなる。常に、表現されるのは「こころの闇に迫る」といった、不可解さに対する投げかけである。視聴者、受け手にあるのは、「曖昧さ」に対する言葉にならない「不安」と「怖さ」であると思う。例えば、少年犯罪のデータを見てもわかるが、ここ10年間の刑法犯の推移は若干上昇気味ではあるが、戦後60年の推移と比べたら極めて少ない社会となっている。しかし、多くの人は「社会に少年犯罪が蔓延」していると思っている。これは情報化社会の特質で、「不可解=曖昧な情報」への過剰反応の連鎖が起きているのだ。
こうした過剰反応の連鎖については、「うわさとパニック」など既に多くのケーススタディ、社会心理における研究がなされている。ここでは、その原点ともいうべき「うわさの法則」(オルポート&ポストマン)を簡単に説明してみたい。
R=うわさの流布(rumor), I=情報の重要さ(importance), A=情報の曖昧さ(ambiguity)
< うわさの法則:R∝(比例) I×A >  
つまり、話の「重要さ」と「曖昧さ」が大きければ大きいほど「うわさ」になりやすい、という法則である。但し、重要さと曖昧さのどちらか1つが0であればうわさはかけ算となり0となる。例えば、1997年神戸で起きた「酒鬼薔薇事件」では次のような法則が成り立つ。
・重要さ:人命にかかわる   ・曖昧さ:犯人は誰かわからない  ・うわさ:次は誰が狙われるかも?
当時、「犯人は中年男性かも」といった「うわさ」が流布されたことを思い出すことと思う。私は敢てこうした事件を取り上げたのも、今流行の「口コミマーケティング」もこうした法則を踏まえて実施されている。ある意味で、「曖昧さ」に人は耐えることがことができないという「心理」をついたマーケティングである。視点を変えれば、心理市場の側面をもつ株式市場などはものの見事に当てはまる。「風説の流布」が極めて重大な犯罪となるのはこうした背景からである。私自身、30数年マーケティングを実践してきており、こうした法則は勿論頭に入っているが、「うわさの流布」を意図的にやったことはない。逆に、「うわさ」の対極にあるのが「実体験・リアリティ」であり、曖昧さの解決=「実体験」が連鎖していく方法こそ「口コミマーケティング」であると考えている。今、「曖昧さ」に対する不安は4つに分けることができる。
1、健康に対する不安:癌といった病気から身じかな不眠といった不安。更には、「食」への不安。
2、経済に対する不安:世代によっても変わるが、社会保障から勤務先企業の経営や仕事への不安。
3、社会に対する不安:主に、凶悪犯罪からオレオレ詐欺などへの不安。
4、人災に対する不安:住まい、エレベーター、電車など生活インフラに対する漠然とした不安。
今、「曖昧さ」の極にあるのが未知なる「こころ」である。しかし、最近の脳科学ではかなりのことが分かってきている。人間の脳の発達は、人と人、人と機械の間では大きな開きがあることが分かってきた。つまり、脳は五感で培われ、都市という五感を感じることの少ない環境では、いわゆる「キレル子供」が多い。既に25年間、「じゃれつき遊び」という情動のおもむくままに遊ばせこころを抑制する訓練を行っている幼稚園に注目が集まっている。都市化によって失ってしまった、いわゆる「五感を取り戻す」一つの動きである。情緒障害を起こしている子供だけでなく、ごく普通の子供ですら山村留学をはじめ自然を感じ取れる環境づくりが必要となっている。情報の表層をなぞるような「うわさ」の時代にあって、こうした「謎解き」こそ必要であると思っている。(続く)

追記6月18日以前のブログをご覧いただく場合は下記のアドレスにアクセスください。http://remodelnet.cocolog-nifty.com/remodelnet/  


Posted by ヒット商品応援団 at 09:34Comments(1)新市場創造